デーンロー Dane law

Adventure of English

The Adventure Of English

The Adventure Of English

ブリテン島の住民の多くがケルト語を話し、後からやってきたゲルマン人達が部族ごとにかなり異なる方言の古英語を話していた頃、ノルウェイを拠点とするバイキングに攻撃を受け、彼らがブリテン島に住み着いたり、ブリテン島の一部を占領したりした。この頃、古英語とデーン語が頻繁に接触し、古英語は屈折語尾を失い、デーン語(ノルド語の一種)の語彙を多く取り入れた中英語へと進化を遂げた。


バイキング


八世紀の終わり頃から3世紀に亘って、ヨーロッパ周辺の町を荒らしては定住した海賊である。故郷はスカンジナビア半島で民族はノルウェイ人やデーン人だった。キリスト教は信仰していなかった。
ノルウェイ人はアイルランドを主な定住地とし、ブリテン島の西側を襲い、バイキングの中でも最も強い勢力のデーン人は、ミッドランドとイングランド東部の広大な領土を占領した。


ルフレッド大王


エストサクソンの君主。信仰心に厚く、ラテン語の教典を古英語に翻訳し、集会や学校教育で用いることで、古英語を教養ある者の有力な言語に押し上げ、その後に訪れる幾多の困難をも乗り超える言語へと進化させた。この功績の結果、991年、デーン人がイングランド王をノルマンディーに追いやったマルドンの戦いも、負けたイングランドの言語で記された。


デーンロー


878年、アルフレッド大王、率いるウエストサクソン(ウェセックス)がデーン人を下し、更なる侵攻を阻止しテムズ川からワトリング道路を境にして北東の地域の支配をデーン人に認めることで和解した。デーン人の治めた土地がデーンローと呼ばれた。


9世紀頃のブリテン島の言語とバイキングの言語


 ブリテン島の住人の大多数は同じケルト語を話していた。ブリテン島に進出したゲルマン族は、部族ごとに異なる方言を話していた。
 バイキングの話したノルド語はインドヨーロッパ語族ゲルマン語派北ゲルマン語群に属する言語であった。インドヨーロッパ語族ゲルマン語派西ゲルマン語群に属する古英語とは、よく似た外国語という関係にあった。


古英語へのノルド語の影響


 古英語がノルド語との接触の結果、中英語へと大きな変化を遂げた。


①英語の語彙の増加


バイキングが定住した結果、以下のノルド語が英語に取り込まれた。

地名 -by, -thwaite, -thorp, -toft, -dale

人名 -son

代名詞 they, them, their

通名詞 steersman, get, both, same, gap, take, want, weak, dirt, birth, cake, call, dregs, egg, freckle, guess, happy, law, leg, ransack, ill, scare, sister, skill, smile, thrift, trust, score, skin sky knife, hit, husband, root, wrong


②語源を異にする同義語の使い分け


 本来、古英語とノルド語で同じものを刺す単語だったが、中英語として共存している内に、ニュアンスの違いから次第に使い分けがなされるようになった語がある。


古英語 バイキング
craft skill
hide skin
hale whole


屈折語尾の脱落


 英語がノルド語と接触した結果、英語は以下の変化を遂げた。
屈折語尾が無くなり、格を専ら語順が担うようになった。
鄱語尾が使われなくなり、その代わり、前置詞が多用されるようになった。


カンブリア、ウィグトンの方言


 カンブリア、ウィグトン地方には、イギリス南部では使われないノルド語を起源とした単語が多く見られた。他の都市では通じないため、現在では使用が減ってきている。